募金の強要

何とも呆れ果てたニュースです。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866918/news/20110520-OYT1T00424.htm

義援金出さなかった生徒の名前、黒板に貼り出す

 秋田県大館市の同市立第一中学2年の2学級で、それぞれの担任教諭が、生徒会が企画した東日本大震災義援金集めで寄付をしなかった生徒計約20人の名前を教室の黒板に掲示していたことが20日、わかった。

 同校では保護者からの苦情で取り外した。

 同校によると、義援金集めは被災地を支援しようと生徒会が企画した。全生徒に募金を呼びかけるチラシを配り、11日から17日まで1人200円以上を納めるよう呼びかけた。

 受け付けは17日朝までだったが、同日の帰りの会で担任教諭2人が、納めていない生徒計約20人の名前を紙に書いて黒板に貼って寄付を促した。担任は納付した生徒の名前をチェックしており、約15人の生徒が掲示後に寄付したという。

 同校の菊地俊策校長は読売新聞の取材に対し、「生徒全員が全会一致で決めたので任意の募金ではないと考えていた。宿題を忘れた人への注意喚起と同じ感覚だったが、保護者や生徒に不安を与えたなら責任を感じる」と話している。

(2011年5月20日11時41分 読売新聞)

 このようなニュースを読むと義援金を出そうという気持ちもかえって薄らいでしまいますね。
 以下、紹介するのは「赤い羽根共同募金」などについて予め自治会費に寄付分を上乗せして徴収するとの自治会決議の効力が争われた事件についての大阪高裁判決です。被控訴人(自治会側)が上告せず確定しています。

http://www3.shakyo.or.jp/cdvc/data/files/DD_71051059172111.pdf

「募金及び寄付金は,その性格からして,本来これを受け取る団体等やその使途いかんを問わず,すべて任意に行われるべきものであり,何人もこれを強制されるべきものではない。」

「従前募金及び寄付金の集金に協力しない会員も多く,本件各会ごとに態度を異にする会員がいる中で,班長や組長の集金の負担の解消を理由に, これを会費化して一律に協力を求めようとすること自体,被控訴人の団体の性格からして,様々な価値観を有する会員が存在することが予想されるのに,これを無視するものである上,募金及び寄付金の趣旨にも反するものといわざるを得ない。」

「募金及び寄付金に応じるかどうか, どのような団体等又は使途について応じるかは,各人の属性,社会的・経済的状況等々踏まえた思想,信条に大きく左右されるものであり,仮にこれを受ける団体等が公共的なものであつても, これに応じない会員がいることは当然考えられるから,会員の募金及び寄付金に対する態度,決定は十分尊重されなければならない。」

「したがって,そのような会員の態度,決定を十分尊重せず,募金及び寄付金の集金にあたり,その支払を事実上強制するような場合には,思想,信条の自由の侵害の問題が生じ得る。」

「本件決議は,本件各会に対する募金及び寄付金を一括して一律に会費として徴収し,その支払をしようとするものであるから,これが強制を伴うときは,会員に対し,募金及び寄付金に対する任意の意思決定の機会を奪うものとなる。」

「本件決議に基づく増額会費名目の募金及び寄付金の徴収は,募金及び寄付金に応じるか否か, どの団体等になすべきか等について,会員の任意の態度,決定を十分尊重すべきであるにもかかわらず,会員の生活上不可欠な存在である地縁団体により,会員の意思,決定とは関係なく一律に,事実上の強制をもつてなされるものであり,その強制は社会的に許容される限度を超えるものというべきである。」

「したがって,このような内容を有する本件決議は,被控訴人の会員の思想,信条の自由を侵害するものであつて,公序良俗に反し無効というべきである。」