議論態度について(Apeman氏の誤り・その3)

 id:Apeman氏の誤りについての記事を連続して書いてきました。言うまでもないことかも知れませんが、私はApeman氏の「意見」を批判しているのではなく、あくまで法律上の「知識」の誤り、「論理」の誤りを指摘しているだけのものです。 
 さて、このロッキード事件の刑事裁判における嘱託証人尋問調書の証拠能力の問題についてのApeman氏のブログ記事の誤りは、纏めると

(1)刑事被告人の反対尋問権保障が問題になるのはどのような場面であるのかについての間違い
(2)憲法と法律の関係(憲法と法律が上位規範・下位規範の関係にあること)についての間違い

ということになるでしょう。
 これらは、ごくごく基本的なことなのですが、その基本事項について理解しないまま(誤った思い込みのまま)ブログ記事を書いてしまったことに問題があるのだと言えるでしょう。
 けれども、これらはApeman氏にとってはおそらく専門外のことでしょうから、誤って理解していたとしても、そのこと自体はそんなに恥じることではないでしょう。誤りは誤りとして直せば良いことです。
 では、Apeman氏は指摘を真摯に受け止め、誤りなら直そうという姿勢をとられているのでしょうか?

 上記の誤りについては、私が指摘する以前に、当該ブログのコメント欄で明らかに専門家であると思われる人から適切な指摘がなされています。

『Apes! Not Monkeys!』
小室直樹って…」
http://homepage.mac.com/biogon_21/iblog/B1604743443/C646496243/E735228537/index.html

 その専門家氏(「法律家ですが・・・」さん)のコメントは

法律家ですが・・・
小室批判の当否等はさておき,Apemanさんの法律解釈・理解は極めて不正確です。
「これは贈賄側であるロッキード社のコーチャン、クラッターへの嘱託尋問調書が証拠採用された件 を指していっているのだが、
2人は裁判に証人として出廷してはいない。それゆえ、そもそも反対尋問が問題になることなどあり得ない」とか
「コーチャンらの証言は供述調書 として証拠申請されているのだから、そこに「反対尋問」が問題になる余地はありません」などというのは
などというのは全く誤った理解で,反対尋問権というものの法的な位置付けを理解しておられないものと受け止めるほかありません。
また,「刑訴法321条は反対尋問を経ていない供述調書を証拠採用してよい場合についての規定なのです。そこでは反対尋問がなかったことは前提になって ます。」
ともおっしゃっておられますが,憲法違反との主張に対して「法律に規定があるのだから・・・」などと反論するというのも議論の仕方として誤っています。
憲法に適合するように法律は解釈されなければならないのであり,その逆ではないからです。
したがって,「渡部昇一小室直樹の議論は問題の立て方がそもそも間違っている」のではなく,あなたの方が問題の立て方としては誤っているのです(結論の当否はまた別です)。
以上については,いわゆる「人権派弁護士」らに特殊な理解ではなく,一般的な,法的な議論の前提ないし基礎というべきものですので
まずは法学や憲法刑事訴訟法の標準的な教科書をお読みいただくことをおすすめします。
(2010年8月10日,1:36:18)

というもので、極めて適切・妥当な指摘です。
 ところが、この専門家からの指摘に対するApeman氏の応答は次のようなものです。

「法律家ですが・・・」って、嘘つくなよ(笑) くだらないハッタリなんて通用しないんだよ。じゃあ、オレも法律家ってこと
にするよw
そもそも、更新停止を明言しているブログにコメントって、どういう了見なんだ? ちゃんと生きている別のブログや掲示板への
リンクもはってあるのに。まともな議論をする自信がないんだろw
(2010年8月10日, 21:43:45)

要するに、個別の裁判の具体的事情に即したことはなに一つ語れない自称「法律家」だった、ってことで一件落着ですな。
まあ、そういう手合いはあなたが初めてではなく、ごく一部の例外を除いてあなたみたいなのばっかりでしたから、そう
がっかりしなくてもいいでしょう。「法律家」を自称したのは失笑ものでしたけどね。
(2010年10月3日, 22:04:59)

 「どこのネットチンピラか」という調子ですが、まぎれもなくApeman氏のコメントです*1
 (Apeman氏は「ニセ法律家」と決め付けているようですが、書かれている内容からして、この方が本職の実務法律家であることはほぼ間違いないでしょう。)

 この“議論”は、↓こちらのコメント欄へと続きます。

『Apes! Not Monkeys! 本館』
「自爆(追記あり)」(2010-10-08)
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20101008/p2

 ここでもApeman氏は

法律家を自称しておきながら、具体的な裁判が問題になっているときに何一つ具体的な議論ができない人間の発言から学ぶことなんて何一つありません。
(2010/10/10 15:02)

つーか、自称法律家氏のコメントを読んでいると、問題の所在をまるで理解できていないことが丸わかりで、他人事ながら赤面してしまいます。
(2010/10/10 15:03)

論点をずらしてるのはあんたらの方なんだよ。「反対尋問権は大切だ」なんて抽象的な水準のことははなっから問題になってないの。それが問題だと言い張ることこそ「論点ずらし」なんだよ。
(2010/10/10 16:43)

まああれですよ、「法律家」を名乗ればたちどころに相手がひざまずくだろうってガキみたいなこと考えてたのに、思い通りにいかないもんだから拗ねてるんですよ。
(2010/10/11 08:40)

などと相手に悪罵を投げつけるだけの対応になっています。

 見かねて私がApeman氏を諫めるためにコメントを書き込みました。それに対するApeman氏の対応は、旧知の私に対するものだけに、上記の専門家の方に対するものに比べたら抑制されたものにはなっています。
 ただ、

あなたが私の反論(そしてそれは私だけからなされたのではないわけですが)を完全に無視している以上、私としてはこの件についてあなたとこれ以上議論するつもりはありません。
もし、自分がなじんでいるフォーマットを使っていない議論をその具体的文脈や内的論理に即して読もうとせずに「憲法と法律との関係をわかってない!」と裁断するのが法曹関係者の発想なのだとしたら、裁判員裁判の評議でどのようなことが行なわれているのか、非常に心配になってきました。
(2010/11/15 23:05)

 専門家の方も私も法律上の知識や論理の初歩的な誤りを指摘しているだけです。「具体的文脈」も「内的論理」も何もありません。間違いは間違いなのであって、それ以上でもそれ以下でもありません。

 ↓こちらにも私へのApeman氏のコメントがありますが、

『Apes! Not Monkeys! 本館』
角栄擁護論がダメダメな理由」(2010-10-12)
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20101012/p1

要するにyubiwa_2007さんとしては相手の主張をその固有の文脈と内的論理に即して読むつもりがなく、自分がなじんでいる論証のフォーマットにあわせて「ここが足りない、あそこがはみ出てる」とやっているだけだ……ってことをはっきりと示していますね。
(2010/10/28 18:02)

 勿論、私は「自分がなじんでいる論証のフォーマットにあわせて『ここが足りない、あそこがはみ出てる』とやっている」のではありません。単に法律上の初歩的な間違いを指摘しているだけです。

 最後に「小室直樹って…」のブログ記事からApeman氏の文章を引用します。
http://homepage.mac.com/biogon_21/iblog/B1604743443/C646496243/E735228537/index.html

そりゃあ、人間誰しも間違いはおかす。研究者だって専門分野ですらミスを犯すのだから、専門外のことでならなおさらである。また、間違いを素直に認めたくないというのも人情である。しかし、少しでも言い逃れの余地のあることで突っ張るならともかく、これほど申し開きのしようのないウソを強弁し続ける神経は理解を絶する。突っ張れば突っ張るほどバカに見えるだけだというのに。

 ↑この文章は小室直樹氏と渡部昇一氏への批判なのですが、これらが全てApeman氏自身にそっくり当てはまってしまうのが残念です。

 さらに、↓こちらのApeman氏のブログ記事

『Apes! Not Monkeys! 本館』
「宿命的な類似性」(2010-10-10)
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20101010/p2

第三に正しい知識に基づいた議論をしていただきたい。渡部氏の法律に関する知識はその根本的な基礎において欠けておられるようなので、基礎だけでも一応の勉強をなさってから、論じていただきたい。

上記は、立花隆氏の渡部昇一批判の文章の引用ですが、これもまたApeman氏にそっくり当てはまってしまいます。

※Apeman氏は「ロッキード裁判」というカテゴリーを作って「小室直樹って…」以外の記事も書いているようです。けれども、「小室直樹って…」がこれほどひどい内容なのですから、ひどいのは「小室直樹って…」だけで他の「ロッキード裁判」記事はまともだとは、とても予想できません。他の記事はもっとひどいのかも知れないとも思えるので、恐ろしくて見る気が起きません。

*1:別人がApeman氏を貶めるために、Apeman氏になりすまして書き込んでいるのかと最初疑いましたが、Apeman氏自身のブログですので、やはりApeman氏ご本人なのでしょう。